国王の夢が詰まった街 モロッコの古都・メクネス

モロッコ北部にメクネスと呼ばれる街があります。聖都ムーレイ・イドリスや世界遺産に登録された古代ローマ遺跡であるヴォルビリスの古代遺跡からも近いこの街の旧市街(メディナ) は、周囲を外壁に囲まれ小高い丘の上に位置しています。1996年にはメディナと古都としての文化財が世界遺産に登録されています。

フランスに憧れた国王が造った街

メクネスが最も栄えたのは17世紀アラウィー朝の時代。アラウィー朝は現在まで続く王朝で当時はその創成期にあたります。このときの国王であるムーレイ・イスマイル(イスマーイールと表記されることもあります)は当時強大な力を持っていたヨーロッパ諸国と積極的に外交を行っており、各国の国王たちと交流を深める中で特に強く傾倒したのが当時のフランスの国王であり”太陽王”と呼ばれたルイ14世でした。

彼に憧れたイスマイル王は新たに定めた王都メクネスを第2のヴェルサイユにすべく、都市の建設を進めていきました。街全体を囲む城壁や巨大な門など今に残るヨーロッパとイスラムの建築様式を融合させた一連の建造物からは、イスマイル王がいかにフランスに傾倒していたかを伺うことができます。

またイスマイル王は王宮だけではなく街のインフラ整備にも力を注いでおり、かつての王宮近くには貯水池や穀物倉庫が造られています。さすがは農業大国モロッコともいいましょうか、建造された穀物倉庫はとても広く市民の食料のほか国王が持つ1万2000頭の馬の餌まで保管できたそうです。

王宮に沿って続く「風の道」と呼ばれる道を城壁沿いに歩けば、穀物倉庫跡や貯水池を見ることができます。また王宮には入ることができませんが、その城壁の長さからヴェルサイユ宮殿にならおうとして造られたという王宮の規模が体感できることでしょう。

太陽王から贈られた4つの置時計と霊廟

1672年に即位したイスマイル王には多くの妻や奴隷がいたといわれています。妻500人、奴隷が3万人、その他に1万2000頭の馬まで所有していたそうです。そんな彼がフランスの太陽王ルイ14世に傾倒し、ヴェルサイユにならった王都の建設を進めながら次に望んだことが「太陽王の娘との結婚」でした。ルイ14世はこれを拒否しましたが、代わりとして4つの置時計をイスマイル王に贈りました。現在この4つの時計はメディナの中にあるムーレイ・イスマイル廟の中に安置されています。

モロッコのヴェルサイユを夢見てその建設が進められたメクネスですが、その完成を見ることなくイスマイル王は1727年に亡くなってしまいます。イスマイル王亡きあと、その後継者たちは王都をメクネスから移してしまったため都市も衰退してしまいますが、夢の実現を見ることなく没した国王を偲んで建てられた霊廟には、美しく緻密なモザイク彫刻が施され、イスマイル王の夢に後継者たちが敬意を表していたことが伺えます。

メクネスのメディナが王都としてその機能を果たしたのは僅か50年程の間です。その50年の間につくられた美しい建造物の数々からは17世紀の街の繁栄が偲ばれます。これら街の中にある施設にはイスラム教徒以外は入れない場所が多くありますので、訪問する時にはガイドブックやインターネットなどで事前に調べておくとよいでしょう。

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