南国の小さなスペイン ビガン歴史都市

スペイン統治時代に東アジアの貿易拠点として築かれたビガンは、フィリピン人の方たちにとっても「いつかは訪れたい」と思うほど憧れる土地であると言います。太平洋戦争時において奇跡的にその戦禍を逃れ1999年に旧市街地が歴史都市として世界遺産に認定されました。

スペイン人が地球の裏側に築いた都市

ビガンの始まりは16世紀の大航海時代まで遡ります。スペインは当時すでに植民地であったフィリピンを東アジア貿易の拠点とするための都市を探していました。中国や倭寇による海からの侵略を避けるため、フィリピン内陸部の川沿いに発見した土地に区画整理を行って誕生したのが後のビガンです。

ビガンは東アジアにおけるスペインの貿易の拠点として333年という長い間、貿易と商業の中心地として栄えてきました。フィリピン北部でも最大の貿易都市であったこの街は、現在アジア地域に残っているスペインの統治都市の中でもとても良い保存状態が保たれていると言われています。また各地に残るスペイン統治都市は、スペインとその土地の文化が融合した独特な雰囲気が特徴ですが、ここビガンもまた他の殖民都市と同じように、様々な異国の文化が融合した独自の街並みを形成しています。

いろいろな国の様式を取り入れた不思議な街並み

歴史都市・ビガンの中心となるクリソロゴ通りには狭い石畳の道を馬車が走る、中世ヨーロッパを思わせる景色が広がっています。しかしその目線を両側に広がる建物に移せば、思わず「おや?」と首をひねってしまいそうな明治か大正時代の建築様式を思わせる木枠の格子窓が目に入ってきます。

「バハイ・ナ・バト」と呼ばれている二階建てのこの建築様式はスペインと中国、フィリピンの建築が融合したビガンの見所のひとつであり、その建物の多くにはビガンへ移住したスペイン人や交易で成功した中国系の商人たちが暮らしていたと言います。

この土地を訪れ定住しようとしたスペイン人は最初、母国と同じように石やレンガを使って家を建てました。フィリピンは古来より台風と地震が多い国。これらと無縁の環境で発達したヨーロッパの建築様式で造った家では耐えることはできません。結果として台風や地震により何度もの倒壊を繰り返し、そのつど建て直しを余儀なくされることになりました。

そこで考え出されたのが「バハイ・クボ」と呼ばれるフィリピン人たちの高床式伝統家屋を参考にした「バハイ・ナ・バト」です。1階は石造りにして倉庫や馬車置き場にし、2階は木造にして風通しを良くすることで暑いときでも快適に過ごせるようにしたのです。また2階部分を木造にしたことで、台風や地震への耐性も備えることができました。

屋根と窓には中国人が持ち込んだ瓦と格子引き戸が採用されており、こうした建物が集まってできた街並みからはビガンが様々な文化が融合した貿易都市だったことが感じられます。

観光のベストシーズン

歴史都市ビガンのあるフィリピンの気温を平均すると約21℃から32℃で一年を通じて非常に温暖な気候となっています。6月から11月が雨季にあたりますが、ビガンでは雨季が5月から9月で7月から9月がピークとなります。この時期は台風シーズンでもありますので、直撃を受けると道路が寸断されてしまうこともあります。ビガンへの旅行を計画するときには台風シーズンは避けたほうが良いでしょう。

古都ビガンには他にも多くの見所があります。戦禍を免れ、破壊されることなく今日まで残ったその面影は大航海時代の人々の思いを現在に伝える貴重な資料といえるのではないでしょうか。

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